八月の空洞 | ha-gakure

八月の空洞

2013.08.23


盆が過ぎて行きましたね。みんなお元気ですか?

8/24に京都グローリーって箱で宮くんのスタジオ「ハナマウイ」の周年イベント「キラウエア」にha-gakureとして出るので良かったら是非遊びに来てくださいね。終わり行くこのバンドがこの日イースタンユースと一緒にライブ出来る事を心底幸せに思います。そして宮くんのスタジオ「hanamauii」が益々盛況になり、多くの音楽人に愛されることを念願しながらライブします。

ところでね、八月は日本人にとっては特別な気がするね。だけど遂にこんな時代が来ましたね。原爆投下の日や真珠湾攻撃の日、終戦の日を知らない世代。狭い国土に戦争体験者と全く何も感じない世代が共存する時代が来たね、って事を感慨深く思います。

八月かぁ。ha-gakureの曲で「八月」って昔の曲があるんやけど、これも「虚無」をテーマに作ったもので、八月というと、何故か「虚無」「空洞」って感覚が蝉しぐれ、高校野球のサイレンに交じって頭上に降り掛かって来るような気がしてならない。

ずっと昔、高校時代、友達と広島市内歩いてたら彼が言うんです。

「歩きよったら死んだ人が触れて来るわ」って。

八月の広島市内って独特な空気です。蜃気楼の先の路面電車、溶けそうなレール、空虚な電停、白いシャツの人々、街路樹の蝉、裏路地の焼けるソースの匂い、突き刺すような陽射し、、一瞬でこれらの景色が地上から消滅した場所ってものに立つと、やはり多くの人が何か「特別」な気持ちになるような気がします。

何か特別で異質な「死」と「虚」を連想、起想させる八月。 いや、これは自分だけなんだろうか。
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この夏、盆に地元の広島に帰省して何気に入ったコンビニの本棚に「はだしのゲン」があったので購入して故郷の蝉しぐれを枕に完読して大阪に帰って来た。
幼少期、父が突然買って来て「読め」と手元に置いて行った「はだしのゲン」は読みまくってボロボロで、数巻が長年行方不明だった。
今回、久しぶりに全巻読めて良かった。

今まで何度となく読んでいたんやけど、今、というタイミングで読むとね、これまた複雑な想いにもなりますよ。

「はだしのゲン」前半は今で言う無責任なネトウヨと言うんですか?軍国妄想国粋ご近所さんたちが、戦争に反対するゲンの家族を徹底的にイジメ抜く描写が続きます。
朝鮮人の朴さんは差別され悔し涙を見せます。差別に反対し、町内の竹槍訓練をバカにして米英と戦争するなど狂気の沙汰と叫ぶゲンの父は言いがかりを付けられ特高に連行されリンチにあいます。

子供の頃はこの辺りの描写をしっかり読んでなかった。とにかく原爆投下後の描写が強烈なので。しかし、日本軍が中国人妊婦の腹を裂いて殺すとか、そういう描写が或る事を考えると、作者にとっての啓発が、ある権力者にとっては「反日」と受け取られ兼ねない作品でもあるかと思いますね。特に今は憲法変えたい人も多いですからね。
子供達が「自分の先祖はこんな酷いことしたのか?やっぱり戦争は駄目!憲法9条変えちゃ駄目!」っていう気持ちになって欲しくない大人達も多いことだろう。

尖閣やら竹島の事、石原の翁のことやら、集団的自衛権やら沖縄の基地やらヘイトスピーチ。
そんな事が戦後68年、今一気に溢れ出してるもんね。こんな時期にはだしのゲン読むと「僕らの普通の暮らし」って簡単に国家によって転覆させられるんだな、ってペラペラな気分になるよ。

松江の教育委員会だっけ?「はだしのゲン」子供は閲覧禁止みたいなニュースあったね。

グロいからとか、そんなんが理由なんかな?いや、違うな〜、。

モロに反戦丸出し、戦前の体制に絶対反対の「はだしのゲン」が思想的、現政権的に不都合なのかな?とか。
松江は島根県、竹島の問題抱えてて、憲法改正にも積極的な人が教育委員会の偉い人の中にいるのかも?とか。

この松江のはだしのゲンに対する時代遅れの検閲問題はソフトにヤバい匂いが漂ってますねぇ。

国家ってその気になれば恐ろしいです。

インドカシミール地方を通過してダラムシャラーに行く途中、カシミールは中国、パキスタン、インドが領土を主張する紛争地域です。夜間、眠ってたら列車が駅のない真っ暗な場所で止まりました。
ドアからインド兵が銃を持って入って来て。乗客をチャックしてました。

僕の所に来て「チャイニーズか?」と銃を向けられました。驚いてパスポートを出そうとポケットに手を突っ込むと、銃口が喉元に来ました。
銃口が自分に向くことは恐らくこれが最後にしたいインド唯一の哀しい思い出ですが、国家と憲法がバックにある人間ってホンマに恐ろしいです。こんなことも平気でやって来ます。

97条だっけ?過半数とかで好きなように憲法変えられてホンマに大丈夫かなぁ。

ミッドウェーで空母4隻だっけ?とにかく虎の子の数隻の空母を失い、事実上の海軍消滅、南の島に兵隊さん置き去り。
制空権も補給も出来なくて飢え死に。

沖縄上陸戦、首都も空爆、日本中が絨毯爆撃で焼け野原、迎え撃つ航空機なし、油もなし。殺られ放題、市民に竹槍訓練、。
戦果は過大、敗戦は隠蔽。マスコミとグルになって嘘八百の大本営発表。
原爆二つ落とされても老人たちはまだ戦争やめない。若者ばかり死ぬ。
陛下はもう無理って言われているのに、行くぞ玉砕、火の玉だ、大和魂だ!と老人達言っときながらソ連参戦でさっさと降参。
戦後はアメリカ相手のビジネスで社長さんに。

ちょっと脇道にそれますが、この戦争の切っ掛けって「満州」だね。
多数の犠牲とお金を払って勝ち取った「満州」を欧米から返せ返せと言われても、日本中の誰もが身内を満州取る為に戦死させてるような状況の中じゃ、政府としても無理だね。「うちの息子の戦死は犬死にか!」って有権者怒らせたら選挙落ちるもんね。そんなこんなで外国の要求無視の世論完成。国連脱退、曖昧な統帥権の乱用もあって満州駐在の関東軍の暴走、泥沼の日中戦争から太平洋戦争。

どうもね、現在もそうだけど、この人気者選挙っていうやり方、ヤバいような気がしますね。いつか危ない目に遭いそうです。
市民、国民の要求に答える内閣って素晴らしいのだけど。。。これって性善説というか、国民は、いや、選挙権を有する国民はみんなしっかり者っていう前提で出来上がってるもんね。
終戦の日も原爆投下の日も関心ない人も選挙権がある時代になってますが、こんな状況で憲法改正議論とか、そして国民投票とかホンマに大丈夫っすか?

俺、自分を信用してないんよね。いつ変貌するかわからん。
環境は簡単に人を変えますよ。今は飢えてないから善人面してるけどね。

飢えて飢えて、いよいよ飢えたら人を殺してでも目前の人が手に持ってるリンゴを奪ってしまうんじゃないかと思ってる。

「俺はね、そんな野蛮なことはしないよー。そんな状態になったらサッサと飢え死にするよー」とか言える自信は全くない。

土壇場でどう変貌するか未知数の人間が無数に寄り集まって行う政治、そんな人たちが作ろうとしてる新しい国家。
自分も含め、日本人が未熟な内に憲法触っちゃって大丈夫なのかしら。

戦後68年、個人的な感想を述べますと年々、日本人は幼くなっているように思います。

近隣での摩擦ね。中韓に対し、これまでの経済的優位を脅かされ、プライドが傷付けられたという不要な怒り、鬱憤が招いているような一連の流れ、という気がしますね。
ヘイトスピーチする人たちの言い分など非常に幼稚ですね。

隣国の悪口言う暇あれば、隣近所の独居老人の様子を見に行って言葉でも交わして来て欲しいものです。 そこで老人たちの戦争体験でも聞ければ随分と思想も変わるでしょう。

言うときますが俺は左右どちらにも関心ありませんよ。
ただ、八月六日、早朝から親戚が集まり、初孫の誕生を共に喜ぶ、親族一同の風景が確かにありました。初孫を抱き上げ「おぉーよーし、よーし」とお爺さんが高い高いして、おばあちゃんが「あなた落とさないで下さいよー」と苦笑い、一同もワッハッハ。父さん「じゃ、そろそろ仕事出るけぇ」母さん、赤ちゃんの手を掴み「坊や、お父さんにバイバイ」と言うた8:15、広島市上空で炸裂した原爆により、初孫誕生に沸く一家、集まった親族一同、一瞬の内に地上から消滅。これ実話です。これが戦争だと基本的に思って今日まで。

ただ普通に命ある限り、まぁね怠慢な人間なのですが出来るだけ丁寧に生きたいと思ってるので国の面子の為に死ぬとか、国のエネルギー戦略の為や利権の為にセシウムまみれの魚や野菜食べて細胞が壊れるとか、そういう無念なことに限りある命を無駄にされたくないだけです。

上空から爆撃されない今の暮らしと、それを成し遂げてる戦後の日本が大好きなだけです。
憲法変えても良いと思います。更に良くなるなら。
「良くなる」の見極めが出来ずに熱帯夜。

薄れ行く日本の八月に寄せて。