そこで生きる人々のエレジー | ha-gakure

そこで生きる人々のエレジー

2012.05.30


このようなプライベートを掲載するのは場違いなのでしょう。ごめんね。一時の清涼水になりたくて投稿します。
(午後1時に書いたものを転載するので時間帯と内容に差異があります)
13時05分、東大阪吉田のラグビー場駐車場で時を借り書いております。
世間ではナマポと呼ばれる生活保護への風当たりが厳しくなってるね。
仕事柄というか、俺のようなフリーランスは他のお寺さんが敬遠する仕事ばかり回ってくるので自然と生活保護の方との縁が多いです。
むしろそちらがメインだし、そういう役回りを意気にも感じています。自分では生死最前線、坊さん最後のセーフティネットだと自負し、そこで観たもの、感じたもの、育てられたもの、理不尽、矛盾、喜怒哀楽はすべて自分を形成する骨肉になり、血はbeatやリリックに還元できると信じております。
そして今日、東大阪のある家に昨晩の通夜に引き続き、いわゆる福祉葬に来ております。先ほど無事に火葬され、今はお骨になって帰宅されるのを花園ラグビー場の駐車場で待っておるわけです。
約三時間、待機な訳ですが、ここは入庫から30分は無料なので出たり入ったりしています。非常な不審者ですね。じきに係員が来ることでしょう。その時は謝ります。
さて、ネットではナマポと誹謗される生活保護。「役立たずは野垂れ死にすれば」とか「税金の無駄」 とか「配給券にすれば」 という文字が飛び交っておりますが、如何なもんでしょう。
先ほど送って来た方はまさに生活保護の人です。
30代と若くして亡くなりました。
彼は重い脳性マヒで生まれて来ました。死ぬ六年前には喉に穴を開けたので言葉もしやべれなくなりました。しかし想うこと、誰かを心配したり、誰かの為に喜んであげたり、誰かの為に涙を流してあげることは僕ら以上に豊かです。ただ言葉に出来ないだけで近しい人はみんな彼から伝わる七色のVIBESを感じていました。最終的に必要なのは手足や言葉なんかじゃないよな。
彼の発する朗らかなビームに吸い寄せられた施設の職員さんや従兄弟でベットの周りにはいつも人が絶えませんでした。彼は巨人が大好きでジャイアングッズに囲まれたベットの周りは笑顔が絶えなかったのでした。打って走って投げる選手に自分を重ねたんだろうね、巨人の選手が活躍すると大きな声で喜んでたよ、と叔母さんが話していました。
彼は年老いたおばあちゃんと二人暮らしです。
お父さんもお母さんも遠い昔、障害を持って生まれて来た彼を置いてどこかに行ってしまいました。 亡くなられたのか失踪されたのかは分かりません。ただ居ないということです。臨終の場にも火葬の時も居ません。
おじいちゃんとおばあちゃんは行商や工場で必死に働きましたが、おじいちゃんが死んでからは、もうどうにもならず、生活保護を受けることになりました。
葬儀は会館を借りる資金もないので文化住宅の自宅隣の空部屋で行いました。
小さな部屋に施設な方や親戚の皆が寄り集まり、膝と膝、肩と肩が触れ合う素晴らしい通夜、葬式でした。
お布施は、正直、俺じゃなきゃやらんな、という額です。だからよ、だからこそ、こういう依頼に敢えてムキになって挑むというのはレベルミュージックっぽくて好きだし、ha-gakureというバンドもそういう理念の基に成立していて欲しいし、こういう依頼に関わることでこんな俺のような人間でも社会に貢献してるだ、というやり甲斐もあります。
小さな封筒に入ったお布施を頂く時に、おばあちゃんに「すみません」と頭を下げたらこう言ったんです。
「おじゅっさん、頭下げんといて、うちの金ちゃうねん。他人様の税金から頂戴したもんやから。ほんまごめんな」
涙が出るで。ほんま。
その言葉に頭を下げた。
今頃、焼かれ、煙、雲になって、やがて雲になって雨降らして、君やあなた達の足元に咲くであろう夏草を育む彼の葬式を出したのは君やあなたやで。俺たちやで。凄いことやってるで。
不正受給もあるだろう、しかし全体の僅かだ。愚かな数%の輩が楽をすすっているのは好かんが、だからというて生活保護全体にプレッシャー与えてはいけない。
俺が知る限り、生活保護の方たちは、今日の彼のように並々ならぬ事情の果てやむなく受給されている人たちばかりです。
そして、彼のおばあちゃんは皆さんに出して貰った葬式じゃ言うて頭を下げておられる。自覚して感謝されている。どうにも出来ん自分を責めておられる。ここに追い打ちを掛けるような事をしてはいけないと強く思ったのであります。
俺らは文句言いながら納税しています。
だけど、知らんところで人を助けてるということ、知らず知らず彼の葬式を出してあげてるっていう自負を持ってもっと誇りに思って良いのじゃないかな。みんな凄いことやってるんやで無意識の内にね。
皆が出してくれた葬儀が無事に終わろうとしています。ありがとう!
そろそろお骨になって還ってくる頃です。では行きます。