ニコ動とキレる老人、そしてヤングママ | ha-gakure

ニコ動とキレる老人、そしてヤングママ

2012.11.29


いつもの喫茶室にいます。

週刊現代、週刊朝日、文春のゴシップにまみれ、美味しい珈琲を戴いております。

常連という枠に入れて頂いたようで、ピラフなど単品にはコーンスープ、または味噌汁は付いてないのですが、

「兄ちゃん味噌汁やろ?」とサービスしてくれます。

なぜ僕が味噌汁なのでしょうか。みそ汁顔しているのでしょうか。
たまにはコーンスープな気持ちの時もあるのですが、サービスに対して意見するのは不義理になると思い、言い出せずにいます。

いつか「コーンスープで」と言える日が来るのでしょうか?

その時こそ本物の常連枠でしょうか。アホなことはさて置き—————-

ここは商店街の一角の純喫茶。
はっきり言うて常連ばかりです。

なぜここを選んだか。
第一に珈琲がうまい。
客が落ち着いてる。
行列が出来ない。
陽当たり良好。
雑ではあるが植物が多い。
週刊誌の種類が多い。
夫婦経営。

まぁそんなところか。

週に2回くらい訪れます。
いつもだいたい静かにゴシップなど見ながら座っているフリをしながら高齢者の「今」を盗み聞きして勉強させてもらっています。

選挙も近いせいか周りでは乱立する政党に対する批判が多いように思いました。

「ほんまなぁ。こうなったらどこも同じようなもんやなぁ」

「ほんまやなぁ。。結局自民しか残っとらんか。維新も落ち目やなぁ」

「もう民主に入れるアホはおらんやろ」

「いやいや!自民の次に支持率あるんやで」

「ほんまかいなぁ〜」

まぁそんなやり取りに混じって角のテーブルでは若いスーツの男性と初老の夫婦が座っていて、

「ほんまに、ほんまに確かか!」

「はい、確かに。僕を信じて下さい」

スーツの男性が夫婦を前にして真っ向勝負をしているようだ。

夫が言う。
「ほんまにその銘柄上がるか?」

妻が言う。
「お父さん、ちょっと、頭冷やして。すんませ〜ん、ちょっとお水ちょうだい」

男性スーツが言う。
「ご主人、奥様、これから数日で政権が変わります。この時を逃す手はありませんよ!」

その声が店内に響き渡ると一瞬お客の目線が全てそちらに注がれた。

—————–どうやらまた政権交代のようです—————

一方、先ほど、隣で政治ネタを話していたご老人お二人です。

「おい、今日、党首討論やるんやろ?あれNHKでやるんか?」

「やるんちゃうか」

「何時からや?生放送やろ?」

「テレビ欄には載ってなかったからニュースでチラッとやるだけやろ」

「編集したら意味あらへんがな。生で観な意味ないわ。ちょっと新聞貸して」

お爺さんは新聞のテレビ欄を観ながら「ほんまややらんな」と呟いた。

俺は教えてあげたくてたまらなくなり、

「あの、ネットですよ」

「ネット?」

「はい、夜の八時からインターネットで観れますよ」

ニコ動の事を伝えて、ログインの仕方など伝えつつ、あとはお孫さんに聞いてみて下さいと伝え帰宅した。

お爺さん「アベシ、キター!!!!」とか書き込むのかな。


————–以上、今日の出来事。ここから昨日の記憶に残る出来事————-

しばらく阪神高速13号線が工事通行止めで、下道に流れてくる車で東大阪方面は連日パンパンです。

渋滞回避で裏道に入りました。

片側一車線の曲がりくねった裏道もパンパンです。

渋滞の中、窓を開けて止まっていると大きな声が聞こえてきます。

「邪魔やっ!!!」

ふと、横を見ると、やや前方の小さな交差点に乳母車を押しつつ、小さな子を抱いたお母さんが、民家の壁際にへばりつくようにして身をすぼめています。

横におじいさんが乗る自転車。その後につづくオバサン達や、女学生の自転車。歩道でも渋滞しています。

怒声はおじいさんが、乳母車のお母さんへ向かって放っているものでした。

狭い歩道です。お母さんは懸命に壁際に身を寄せ、スペースを作っていました。
ゆっくりすれ違えば明らかに進めるスペースはあるように見えたので、

「行けますやん」

と、横に付いて伝えると、

「うっさいわボケ!」

と言うので、あぁイライラするなぁ〜とか、も思うわけですが、次の瞬間、おじいさんの後ろのオバハンが、

「あんたも子供の頃あったやろ?そんなエゲツナイ声出して!子供が可哀想やんか!」

と、じいさんに言いました。
他のオバハンも、

「せや、せや」

と言いました。

じいさんは、言葉にならない怒声をゴニョゴニョ放ちながら去って行きました。

歩道の渋滞は解消されました。こちらの渋滞はまだ続いており車は動きません。

そして意外な風景に接触したのです。

さっきまで身をすくめ、小さくなっていた二人の乳飲み子を連れたお母さんが、去ってゆくじいさんの背中越しに、

「クッソー腹立つ!!クソジジイ!!」

俺は、驚いてしまい、前が進んでいるのに気が付かず、後ろのトラックにプッ!と鳴らされたのですが、すぐにアクセルを踏む気にもなりません。

呆気に取られていたと思いますが、同時に何だかスッキリしましたし、何だか微笑ましく思い、笑ってしまいました。
何だかその若い母の逞しさに元気を頂いたような気持ちになりました。

ただ、お母さんが言い放った後、後ろのオバハンが、

「そんなん言うたらアカン」

と諭し、少しシュンとしている若いお母さんの姿をミラー越しに見つつ、本当に嬉しくなりました。
ここに居る人々が全ての役割を果たしたって場面でした。

まぁその怒れるお爺さん、今回ばかりは庇うことは出来ません。
明らかに若い母親は二人の乳飲み子を抱え、懸命にスペースを空けるよう努力していましたから。

トラウマになって外出拒否とかにならなかったら良いのに、と思っていたのですが、爺さんの背中に「クソ!」と放てる人のようなので大丈夫だろう。

東大阪歩道人間劇場に出演された全ての人たち、
「みんな末永く元気で!」
と、心の中でハミングしながら徐々に進み始めた渋滞の澱みの中に埋もれて行くのでした。

色々あるけどね、何と言うか、月並みやけど、人生って悪くないなって思いました。

万歳だな。