ムラオ4
2007.06.29
「しゃあない、女子に嫌われたら高校生活も台無しじゃけぇ これくらいにしといたるわ」
そういうと金ドはムラオから離れ子分達と出て行った。
「大丈夫!?」
さっき絶叫していた女子が駆け寄って来て言った。
「う、うん」
ムラオは鼻血を袖で拭いて立ち上がり自分の席に座って涙を拭いた。
まただ。
またこんな状態になってる。
いや、違うか?
昔の俺は先手を売ったことも後手に回ったこともなく、ひたすらシバカれてたもんなぁ。うん、そう考えると今日の俺は少なくとも先手をうつ、不意をつく、という意味ではまともに相手と向い合ってるんだし、これはこれで攻めてる人生と進歩を褒めてやっていんじゃないか。うん、そうだ。
そう思うとムラオは急に元気になった。
そしてさっき声を掛けてくれた女子にお礼を言おうと思いグループの真ん中でキャッキャ言うてる先程の女子の所に行き、
「あ、あの。。さっきはありがとう。」
反応がない、それどころか深い沈黙が訪れてしまっていた。
教室全体が、である。
「あ、、あの〜」
ムラオがもう一度言おうとした時、
「そんなことより、、ねえ、、手当してもらった方が、、」
グループの中の一人の女子が言った。
続けて、
「ほんと、、ひどい、、血だらけよ、、、」
他の女子も口々に言ったのでムラオが顔を撫でてみると確かに
ひどい出血のようである。
「う、、うん わかった」
ムラオは保健室に行った。
「すみません、、怪我しました、、」
「は〜い!」
奥から透き通る小鳥のさえずりのような声が聞こえ、美しい白衣の天使が出て来た、出てくるなり
「キャー!ど、、ど、、どうしたの??!それ!」
「あ、ちょっと、、ははは」
白衣の天使が怯えてると奥から男の声が聞こえてきた。
「なんや?どーしたん?」
「ちょ、、ちょっと!!ムラサキくん!!来て!」
奥から出て来たのは昨日MUSICの話をしてくれたムラサキだった。
「お?お前か。どうしたんや?それ〜 へへへ」
「あ、おはよう」
「お、、おはようじゃないわよ!!君!早く血を止めなきゃ!」
ムラオとムラサキの会話を遮るように白衣の天使が言った。
ムラオは止血や消毒をしてもらいベッドに寝かされた。
白衣の天使はとても良い匂いがした。
ムラオが横になってるとムラサキが購買でフルーツ牛乳を買って持って来てくれた。
「あ、、ありがとう、、」
「へへへ」
「あ、、なんかごめん、、」
「あぁ。どうしたんや?それ?」
「うん、、実は喧嘩して、、」
「は?」
「喧嘩を。。」
「誰と?」
「同じクラスの、、」
「誰や?」
「金髪の。。」
「金尾か?」
「ん?名前は知らんけど、ドレッドの、、」
「おう、金尾じゃ」
「何で知ってるの?」
「ここらじゃ有名な糞ガキじゃけえの」
「そうなん、、喧嘩売って来たんは向こうじゃけど、でも、俺が先に手を出したから、、」
「マジ?やるのう。まぁ、相手が悪いわ、、」
「強い?あいつ」
「あぁ」
「ムラサキくんより?」
「いや、それはないわ」
「じゃムラサキくんの方が強い?」
「一度、駅前で半殺しにしとるけんのぅ」
「そうなんだ!強いね!ムラサキくん」
「アホか、ワシはもう喧嘩はせん」
「そんなん俺も一回くらい言うてみたいよ〜」
そこへ白衣の天使が担任教師を連れてやってきた。
教師は、そこにムラサキの姿を見つけ、一瞬怯んだような様子だったが、
「おい!お前、、大丈夫か??」
「は、、はい」
「君はムラオくんだな。喧嘩の相手は?」
「金尾」
ムラサキが答えた。
「君には聞いてない!どうなんだ?ムラオくん!」
その次の瞬間にはムラサキが担任の胸ぐらを掴み
「おい コラ!なんやその言い方 あん?」
「やめ、、やめたまえ!!」
「やめて!駄目よジョージ!」
白衣の天使が言った。
「ジョージ!!やめなさい!!」
白衣の天使がそう言うとムラサキは手を離し、うなだれる担任に一瞥をくれて出て行った。
担任は着衣の乱れを直し、
「たくっ!あの野郎、、8浪もしやがって、、まるで此所の主みたいな気でいやがるっ!理事長の息子じゃなかったらとうに退学なのに、、くそ!」
「先生!それほんまですか?!」
「何が」
「8浪、、理事長の息子、、」
「あぁ、ほんまじゃ、、今年こそ出て行ってもらいたいもんじゃ」
白衣の天使は「ジョージ!ジョージ!!」とムラサキを追いかけて行ったまま帰ってこない。
ムラオはベッドに横になりながらこれから先のことを案じていた。