男の嫉妬ほど醜いものはない | ha-gakure

男の嫉妬ほど醜いものはない

2012.04.26


あまりに非日常だったので今すぐに書く。
昨日、以前日記にも書いたように、或るご主人の姉が死後数ヶ月で見つかり、俺は火葬に付き添った。
その後奥さんから連絡があり、
「私は死んだ主人の姉から憎まれてましてん。お骨を家に置いておくと幽霊が出るから預かってください」
という申し出があり、俺は納骨の準備が整うまでなら、という約束で預かった。
しかし、いつまで経っても連絡がないので連絡してみると、あと一週間待って、と言われるので待つのだが、その一週間後には、あと一週間待ってと繰り返すばかりなので、さすがに故人が気の毒になり、故人の気持ちを代弁して叱ると、奥さんは「死んだ姉 がお坊さんに憑依した!」と慌てるばかり。
代弁しただけなんだがそれが効いて四天王寺の永代納骨を決意された。
そんな個性たっぷりの奥さんだったのだが、あれから二年。
昨日、久しぶりに電話があり、どうも無数の霊現象にお困りなようで、霊視してくれと言われる。
そんな能力ありません、道理を伝えるのが僕の仕事ですよ、と伝えつつも、悪い人じゃないのは良く知ってるので、話すと楽になるかもしれないですよーと、話だけ聞きに最後のお参りの後、夕方なら行けます、と言うと「家はダメ、主人に聞かれたら叩かれる!」と凄い怯え様だったので、これはイカン、ということでその日の夕方、二人で場末の喫茶店に入った。
会うなり「近所の人にお坊さんが家に出入りしているのがバレたらどんな噂流されるか分からんから」と言われてたが、奥さんの中では坊さんは完全にアンタッチャブルな存在なんかな。まぁええわ。俺は俺。
要件は三つ。
1、息子が無保険のバイクでヤクザ風の歩行者(奥さんが言うには当たり屋)と事故して百マン円請求され、一年ずっと裁判してる。バイクに悪い霊が憑いてる。息子は悪くない。お祓い頼む。
2、死んだ姉が主人の両親の墓の管理費を長年溜め込んで30万の請求が来た。墓参りに行くと無縁にしますよ、と寺から責められるから墓参りに行けず先祖の霊が怒っている。だけどお金払えないし、姉のせいやしこっちが払うのは納得行かない。絶対払いたくない。更地にされて無縁にされたらとんでもない祟りがあるのか。
3、主人はタクシーの運転手で、半年前、奈良の山中へ客を下ろした後、異様な雰囲気の山道で迷子になり(プロなのに?ナビは?うーんどうも浮気っぽいけど、、)二日帰って来なかった。その日を境に優しかった主人が人が変わったように狂い始め、姉の溜め込んだ管理費を払うのが嫌や、と言うた時、「俺の親を粗末にしやがって」と殴られ、その日以来喧嘩が耐えない。もうやって行けない。主人は奈良の山中でモノノケに憑かれたと思うのでタクシーに付ける御札がほしい。
この三つ。
全部幽霊のせいにしちゃいけんよ。
苦しみが外からやって来ると思ってる内は苦しみはなくならんよ、と言うが道理に対して耳を閉じておられるから、俺の話を遮るように愚痴が溢れだす。
聴こう、もうとことん共感しよう、共感!共感!共感!と方針を変更し、望まれるすべてを実現してあげよう、そこに安心が訪れるのかどうかは本人に託そう、という方向に意識を集中し、一体何を望まれてるか必死に観察した。
「大丈夫、言う程ね悪くない状況ですよ」これを言うてあげなきゃダメだ、と気付いたのが終盤。
しかし、人は形がほしくなるものだ。俗に言うお墨付きね。
「とにかく御札ください!」
と、どうしてもと言われる。これは教義的にあり得ないです。絶対に手を出してはならない領域。これをやってしまったら俺は破門です。どうする。どうする。
-------------------------–とにかく弐杯目の珈琲を頼む--------------------—-
現在、耳を目を心を完全に閉じてる人を前に、道理を説いて何になる。
『あの人だけはやめときな、ロクなことにならんぞ』
『その仕事だけは、やめときな』
『東京出て音楽で食う?お父さんとお母さんはそんなこと許しません!』
熱く燃え盛る情念と実現の可否は一緒にしてはいけない。やる前から第三者によって挫折癖を付けさせてはいけない。本人が自分で限界を知ることが次の扉へ繋がっているのだから。
やる前から『どうせ俺なんて』癖を付けるとそれは一番楽なので依存性が高い。
俺もそうだから。だからやっちゃれ、な。
坊さんよろしく「此れはこう、アレはこう」と、シタリ顔で説法ぶって君と俺との間に何が残る?
そんな器量の狭い事やって楽してたら俺と、その個性的な奥さんの関係はここで切れるだろう。いつか俺はひとりぼっちになるだろう。
そして奥さんはまた次の都合の良い人を探すだろう。
もしその人が心根の良くない人だったらどうなるだろう。
依存性とお金、多くを奪われる日々に出会うかもしれない。
俺は良い人ではないけど、この個性的な奥さんを可哀想な人とは思わないし、むしろ可笑しみと頼ってくれるという可愛さも感じてる。それくらいの余裕があるならば、今後付き合いを継続する中で、いつか気がついてくれる日に立ち会えるかもしれない。それは未来というものだろう。一言に「未来」と言うが、今の中にしか「未来」はない。未来のない今を送っていたら永遠に「未来」は来ない。未来というのは月日でも時の経過でもない。可能性だろ。
ここで「有る、無い」の線引きに走り安直に「常識」という薬にも凶器にもなるものを振りかざすべきじゃない、そう判断した俺はおばさんと友達になる道を選んだ。
「わかりました。御札お渡しします。これは奥さんだけですよ。明日は休みですからお昼頃に持参しますね」
と、言って別れた。
帰り道「死ぬ死ぬラーメン」という店の看板が目に入った。変な名前。「油そば、かぁー」
----------------今日は色んなことがあったなぁ。朝は霊友会との合同葬儀。家族内で霊友会とアンチ派が居て、最終的に通夜は霊友会で、葬儀は仏式という超変則葬儀。色とりどり。-----–
帰宅して、ずいぶんと悩んだ。
御札なんて絶対にやってはならない宗派だから俺は破門になる、そういうことをやろうとしている。だからお金は何があろうとも貰ってはいけない、と決意を固め、半紙にお経の一節を記し、印を押して封をした。経本を差し上げる、という体である。
翌日、そう、さっきね。おばさんの家に伺う。絶対に中に入れてくれん。何なんやろなー、まぁええ。玄関先で立ち話。
「これが御札です。正確には御札ではなくて中身はお経の一節が書いてあるだけです。それよりも玄関から先ず凄いゴミやから、色々悩むのも素敵ですが、不要なものを捨てることから始めたら知らず知らず良くなっていきますよ」と話をしながらも奥さんからは「どうですか?幽霊の気配感じますか?少なくとも4、5体はいるはずなんですよ~」という質問ばかり。
大丈夫大丈夫ですよ、悪さしませんから安心して暮らしてと伝えつつ、これは、大掃除したらかなり気持ちが楽になるだろうなぁ~と物理的に思う。
今回、なんとか繋いだから、ここで関係が切れなかったから、いつか奥さんとその家族が目覚め、掃除をして、生き方を転じてゆくかもしれない未来の光を感じながら別れる。
別れ際にお礼せなアカンのにお金がないからと言うて缶ビールくれようとしたけど、飲めないのです、と断り、また不安な時はお茶しましょう、その時はおごってね、と別れる。
良かったんだろうか、これで。いや、失格だろうな。迎合してしまった自分の非力にヘドが出る。これが今の俺の限界だ。まぁそれほど絶望的でもないのだけど、何か申し訳ない。
----------—-ここから気持ちを入れ替えますよ。ここからが本編です---------------–
さて、「死ぬ死ぬラーメン」が気になって仕方がない。
そう昨日奥さんと別れた後、目に入って来た看板。
気分転換に一か八か入ってみようと思い、店の前まで。
看板のメニューを見てみると、名物油そば、と。2、3枚の油そばの写真入り看板が重なってて、ここだけ異常に盛り上がっている。すごい押しようだな「油そば」
実は、複雑な看板だったのでラーメン屋だけど蕎麦もある、みたいな勘違いを俺はしたまま店に入った。
既に、あぁ、ラーメンより蕎麦の方がええなぁ、という気持ちになっている。
誰もおらん。昼時やで。
ちなみに「しぬしぬラーメン」ってのは「油そば」のサブタイトルです。店名じゃないです。この時点でこんがらがっているのです。「油そば」とはラーメンなのか蕎麦なのか。
入るなりヤられた。
店主が個性的過ぎ。
談志っぽいバンダナのおっさんフレンドリー過ぎ。
声しゃがれ過ぎ。
「どっから来たん?近所?」 これ、椅子に座る前やで。
俺は座りながら「鶴見ですわ、近所じゃないです」
店主、水を置きながら「あぁー遠いしリピーターなられへんな、最近そんな客ばっかりや」
注文前に否定から入るかぁ、斬新だなおっさん。
メニュー見ながらも、頭に油そば、という蕎麦?ラーメン?多分油かすの蕎麦やろな、というテーマで決まってたので「油そばください」 と伝えると、
「お!お客さんやるねぇー、どっかでウチの噂聞いてたん?」
「は?いえ」
「あ、そう。油そばね、ウチの看板名物よ!期待しちゃってえーよ!死ぬ死ぬラーメンや。これ辛くて死ぬ死ぬじゃなくて、旨くて死ぬ死ぬやから~!はーいサンキュー!」
そう言うて嬉々として調理に入る。チャーシューをレンジで温めだしたので不安になり、
「おじさん、蕎麦にチャーシュー入れるん?もしかしてラーメン?」と聞くと、
「はーい、ウチの看板名物ラーメン、油そばと言えばチャーシューだーい!これ誰の物まねかわかる?彦摩呂~。ちゃうかっ」
と、ご機嫌なのだが、ラーメンはちょっと嫌だなと思ったので早く訂正しなきゃと思い、
「おじさん、俺そばが良いわ、それラーメンなら蕎麦に変えてええですか?」と聞くと、
おじさんちょっとキレ気味に、
「ウチはラーメン屋!そば屋は隣!!困っちゃうなぁお客さーん、もう作っちゃってるからキャンセル駄目よー食べてってよ油そば!絶対後悔せんから~!」
思い当たる節があり、カウンターから振り返ってもう一度外を見ると、2、3枚の油そばの看板が入り乱れて分からんかったけど、そば屋の看板とラーメン屋の看板がちゃんと二つあるじゃん。しかもどっちも油そばが名物、ややこしいねん、、、
あぁ間違えたわ。まぁこれも不思議な巡り合わせだ、こっちの油そばを食べる運命だったんだろう、と腹を決め、あとは、こっちがべらぼうに旨いことを願うしかない。
調理してる内もしゃべりは止まらない。正直、すでにリピーターになりたくない。静寂が結構好き、と察してもらう為に携帯を意味もなく触ってると、
「お!お客さん!もしかしてウチのことTwitterで呟いちゃってる?Facebookでもどんどん名前出していいよー!ちゃうか!」と言うて笑ってる。
なんかね、チャーシューをレンジでチンする時点で何か嫌やなぁって感じやし、まぁ結果から言うと残念ながら不味かったので名前は生涯だせません。個人情報保護法。
出て来たよ。油そば。
「写真撮る?upとかしても全然オッケー」
「……..」
こんな客いじりが過ぎる店ある?写真撮らんよ!麺どくさい!
このままじゃあまりに店主に失礼だから一応、言葉で油そば説明します。
『汁なし、出汁が少し、混ぜて食べる。キクラゲ、カイワレ、キムチ、チャーシュー、卵が太麺の上に乗ってる。暖かい冷麺。以上。追伸、店主曰く、ラーメン界のパスタ。または第三のラーメン、つけ麺の次に来る奴』
食べてる最中も油そばの説明が止まらない店主。
作った作品の説明をしなきゃならん時点で作者の負けなのだよ。
もう静かにしてやー、を察してもらう為に横にあったラーメンの本を見てると、「お!そこにウチ載ってるねん」と言うて、隣に座ってきた!友達かっ
ここ!って指差した所に赤丸がしてあった。嬉しかったんやなぁおっちゃん。
「あーぁ、載ってもなー、なーんも変わらん。今日の昼は兄ちゃんの他にあと二人来てくれたら御の字やけど、、、来んなー。何でやろ?旨いと思わん?どう兄ちゃん、油そば」
そういうことをカウンター席の俺の隣に座って言うとるんよ。どうこのプレッシャー。帰りたい帰りたい帰りたい帰りたーい!!!!!!怖い怖い怖い!!
俺のATフィールドそんなにヤワやったっけ?結構みんな察してくれるよ。こんなに土足で入られたことないわ。怖い怖いよー。もうこれ以上油そばの感想聞かんといて!!!
「旨いすね」「一風変わってますね」「個性的やわ」「驚きました」「こう来るか」
もうないねん、もっと形容詞増やさな音楽的にも不味いんやけど、今の俺にはこれが限界ですよ。もう言わさんといてーやー感想とか、それが客が来ない原因やで。 俺の表情とか見て察してやマジで。心折れそうやわ。
ラーメンは不味かったのです。やたら油が濃くて吐きそうマジで。
俺はこれに800円払うんだから正当に評価して不味いもんは不味いという権利がある。言うてもええでしょ。
残念だった。 これ以上ラーメン絡みの話は苦しかったから話を反らせようとして、店内に置いてある監視カメラの映像が気になり話をしてみた。
「おじさん、あの監視カメラなんで?」
カメラは国道沿いにあるラーメン店の表を撮し続けている。大きな道沿いなのでひっきりなしに車が過ぎてゆく。歩道を行く人も多い。しかし誰もこの店の暖簾はくぐらない。ググらない。
「あんな道の映像ばっかり映して変なの。あ、あれか、客の路駐のキップ切られんようにする為ですか?」
繁盛してないけど、設備投資して車で来る客の為にえらいなぁー。やはりハートは熱いんやな、頑張って欲しいなぁ、と感心してたら、店主が急に暗い顔になって、
「お客さん、ぶっちゃけウチの油そばと隣の油そば、間違えて入って来たでしょ?」
「いや、はぁ、まぁ、蕎麦かなぁーって思って、いや、看板近過ぎるよーありゃ間違えるよーでも良かったよ、こっちの油そばで、、、体験として新鮮でしたし」
「ありがと。実はね、先にウチが油そばを名物にしてたのに、あっちがある日、油そばっていうメニュー上げてな、まぁ最初は『油カスそば』やってんけども、わしが名前変えろ!って文句言いに行ったらあいつら、よりによって当てつけみたいに『油そば』っちゅーて同じ名前にしやがって!ほんですぐにアッチが『油そば』の看板出したからな、わしもメニューの看板出さな!と思ってな看板作ったんや、そしたらな、今度は向こうが文句言うて来たんよ。はぁ?って感じやろ?!こっちが先に油そば出してんのに何言うてまんのんお宅?って話やんかー!しかも流行っとんねん向こうの方が!」
最後の自虐ネタにマジで爆笑しそうになったけど、確かに監視カメラの映像を見るとひっきりなしに客が出入りしてる。それを見ながら俺も内心間違えたなぁーとガックリ。
「あ!兄ちゃん、見てみ!」
監視カメラに目をやると、一台の車が店の前に路駐しようとしている。
まさか、、、
「兄ちゃん、この車うちに来ると思う?賭けようか?」
俺は無視する。二人でどちらに行くか固唾を飲んで見守る。
「あ!!!あっち行きよる!!!」
そう言うて店主は勢い良く出て行った。
俺は一人、店に残され、監視カメラの映像を見ている。
店主がドライバーに詰め寄る。店の前だから声も同時に聞こえる。
温和だった店主とは思えぬ罵詈雑言を浴びせ掛けている、隣の蕎麦屋から騒ぎを聞いて出て来たバイトの女の子にも食って掛かってる様子である。遂に隣の店主が出て来たようだ。俺は何だかすべてが嫌になった。
今日は人のせいにする人と会い過ぎた。
外に出て、喧嘩してる店主に会計してと伝えると、
「はいはい!ただいま!」
と、困惑する隣の店主とバイトの女の子を置き去りにしてニコニコして戻ってきた。良く切り替えが出来るもんだ。不信感さえ抱く。それだけ日常茶飯事なキレ方なんだろうなぁ。
「はい!にいちゃん800円になりますーまいどー。また来てね!美味しかったろ?今度は友達一杯連れて来てね!」
凄い嫌な気分になった。
「いや~ないわー」
と、はっきり言うたのは俺の精一杯の誠意です。緊張したけどね。言わずにはおれんわ。
これは800円払った一人の客としての仁義です。
ほんと、オトコの嫉妬ほど醜いものはない。
ライブハウスはBARカンとフロアが別れていた方が良い。待避場所っていう奴。
お客は嫌ならBARに避難出来る。それによって間接的にアーティストは自分の力量を確認できる。 ええ音なら戻ってくるもん。
このラーメン屋の店主は現在の自分を知らなさ過ぎる。
ごめんディスってマジでね。
俺にとってはあまりに非日常だったよ。そして少し理不尽な気がしたよ。みんなはどう思うだろう。
隣の蕎麦屋がライブハウスやクラブで言うところの待避BARフロアだろ。
うまくないからそっちに流れるんだよ。アッチが旨いから繁盛するんだろ?
うまかったら戻ってくるよ。
それを自分の店の前に置いた車のドライバーに当たり散らすなんて、警察に路駐密告するなんて筋が違うってもんよ。
どうやってもスキルが上がらんのやったら、店の前に路駐したドライバーにこう言うてやれ。
『しっかり監視カメラで見張っておいてあげるからゆっくり隣の油そば楽しんで来てや、こっちにもラーメンバージョンの油そばあるからいつか来てね』
現状ではそれを言えてトントンやろ。
こんな俺が言うのも筋違いやけど、苦しみが外からやって来ると思っている内は苦しみはなくならないよ、おとっつぁん。
俺もがんばるからよー!