大丈夫。お前なら大丈夫。 | ha-gakure

大丈夫。お前なら大丈夫。

2012.11.5


昨日はKAIKOOというイベントでライブしました。

いつものライブと何ら変わらなかったのだけど、ただ昨日はたまたま法事が多く、時間にも追われるし、心を一つにして待っておられる親族もおられる。
どんどん押してしまったけれど、今夜のライブの為に声を温存しとこうなんて一切考えない。この人の読経で喉が切れてライブで声が出なくなってもええ、そう思い繋いだ一日だった。

そして、19時最後の家を出た時に携帯を見ると葬儀社さんから着信がある。
すぐ掛けなおすと、枕経に今すぐ向かってくれ、との事。

枕経とは亡くなってすぐの臨終勤行です。とにかく教えられた住所へ向かう。

家のそばには近所の方々が溢れ沈痛な表情。喪主は若い男の子で、家にはギターや、ターンテーブル、カオスパッド、たくさんのレコード。そして彼の父が眠る仏間には父上が好きだったというビートルズが静かに流れていた。

お母さんは声もなく首を折り曲げ父上の枕元に丸くなって座っておられた。
全く以て掛ける言葉もなく俺がお母さんの隣に座った時に流れて来たのがヘイジュードだった。

音楽の力はすごいだろ。本当にすごいんだよ。

俺はお母さんの手を取り背中をさすってあげられる事しか出来なかったけれど、はじめて会った、そして事情も何も分からない高齢のおばさんと抱き合えるなんてね。
俺に器量があるとかじゃないよ。俺なんて人間はすぐにメンバーと喧嘩するし器量の狭い、余裕のない人間なんだから。

そんな俺が「おばさん、俺おばさんのこと何も知らんけど、これからの未知なる日々に可能性があることをマジで願ってるからね」と、言葉にすれば薄っぺらいけれど、そんな想いが溢れ出したのは、紛れもなく音楽の力だろ。

だから俺は音楽の力を信じてるの。風景を一変させる力を持ってるだろ?人生や価値観だって変えてしまうのだよ。だから良い音楽を沢山聴いておきたい。死ぬまでにな。

お母さんの背中さすってたら若い喪主の息子の彼が話掛けてくれた。

「父が好きだったんで、ビートルズ。僕の趣味とは違うんですけどね」と、少し照れながら涙を沢山溜めてね。

「音楽って本当に良いよね」と俺が返すと、「僕はこれからビートルズに救われてゆくんだろうなぁ」と呟いておられた。

父上は、自死だった。30年、タクシーの運転手をしておられた大ベテラン。装束は白の白衣じゃなくて、赤いネクタイのタクシー会社の制服だった。昨年個人タクシーに切り替え、意気揚々と始めた事業やった。朝も夜も懸命に走られたのだ。

一心に懸命に家族を守るたもに。そして御自分の人生の為に。

激務の日々を支えてくれたのはビートルズだったろう。
あなたの息子も音楽に救われていますよ。とても音楽が大好きだって。

ジャンルは違うけれど、彼の目、とても強い光を感じましたよ俺は。
彼は音楽の力を知ってる。そして恩返しをしよう、同じ境遇の人々の助けになるような音楽を作ろうとしてますよ。
きっと信じられない程の素晴らしいpeaceを放ってくれるような気がして仕方ないです。

いつか、同じ舞台に上がれる日を期待しつつ、今夜、父上の通夜で声を張ってきます。
一日の大半を「今夜ライブなんだなぁ」 ということも、心の準備もなく、カラフルな人々で溢れるいつもと様子の違う様子の心斎橋に到着するや否やのライブでインターバルが少なく心配だったけれど、ステージに上がれば終電間近なのに待ってくれてる人たちが迎えてくれたお陰でスイッチを入れることが出来ました。

俺は生かされてます。

大事に、だけど大胆に生きていきます。

これを読んでくれた縁のある友達たちよ、俺、たいして何も出来んけれど、俺は弟を自死で失った兄貴です。なにも出来なかった無力な兄貴です。

だけど、家族で約束したの。自分で決めたこと「自決」なんだから、もう、その選択をしたことについてはリスペクトしてあげよう、と。

こんな俺でも背中さするくらいは出来るねん。
あなたがもし、自死したら、俺はその選択を「バカなこと」と否定しない。
だけど、もし、その淵に居ながらもまだ声を出せることが出来るなら連絡してくれ。
本当に頼むで。月曜日、今週もお前らのペースで行ってくれ。
俺も、みんなもよろしく。